ナンバーもついた。保険も整った。バイクは、いつでも走れる状態になりました。
あとは、私が走り出すだけ。
……それがいちばん、難しいのですが(笑)
なぜ日曜の早朝だったのか
初めての公道は、日曜日の早朝を選びました。
理由は単純で、車が少ないから。
平日の道路に、30年ぶりのリターンライダーがいきなり出ていく勇気は、さすがにありませんでした。誰かの迷惑になったらどうしよう。後ろから車が来たらどうしよう。そんなことばかり考えていたので、少しでも交通量の少ない時間を狙ったのです。
「うわー、私、バイクで走ってる!」
最初に走ったのは、会社の近くまでの道。
毎日、車で通っている慣れた道です。どこにカーブがあるか、どこに信号があるか、全部わかっている。だからこそ選びました。
エンジンをかけて、ゆっくり発進。国道に出る道も遠回りして信号のあるところを選びます。
走り出してすぐ、思いました。
「うわー、私、バイクで走ってる!!」
30年間、バイクで走っている人を見るたびに「いいなぁ」と思っていた、あの景色の中に、自分がいる。ヘルメットの中で、ひとりで感動していました。

……とはいえ、腕はガッチガチ。
肩に力が入りすぎて、ハンドルを握る手も固まったまま。「リラックスして」なんて言われても、無理な話です(笑)
止まる練習で、いきなりエンスト
車が全然いないことを確認して、途中で止まる練習をしてみることにしました。
教習所でも「止まるときのふらつき」を指摘されていたので、そこは意識していたつもりだったのですが——
エンスト。
やってしまった。うん、でも大丈夫、想定内。
それでも、この日は何とか転ばずに帰宅。ほんの20分くらいの練習でしたが家に着くとホッとしました。
「意外といけるかも」——そう思ってしまったのが、いけなかったのかもしれません。
2回目の練習で、それは起きた
翌週の日曜、早朝。2回目の練習です。
この日は少し距離を伸ばして、また別の行き慣れた場所まで走ってみることにしました。
道中は順調でした。前回より少し慣れてきた気もする。
そして、目的地に到着して、バイクを停めようとしたとき。
ハンドルを切ってしまっていたようで、そのまま左側へ——
転倒しました。
ガソリンが漏れてきた
慌てて起き上がって、まず目に入ったのが、漏れ出しているガソリン。
もう、頭が真っ白です。
とにかくバイクを起こさなきゃ。そう思って、力いっぱい引き上げようとしました。
でも——びくともしない。何度も何度も「お願い」という気持ちでチャレンジしましたがダメでした。

ここで思い出したのは、30年前のこと。教習所で、倒れたバイクが起こせなくて「小型免許にしたら?」と言われた、20歳の私。
30年経って、同じ場所に戻ってきてしまった気分でした。
ガソリンは満タンにしたばかり。無情にもガソリンは漏れ続ける。焦る。泣きそう。もう、絶体絶命。
助けてくれた、名前も知らない親子
どうしようもなくなって、私は近所の家に走りました。
1件目。チャイムに応答してくれたのはかなり年配の女性。ダメだ。頼めない。
2件目。ちょうど庭先に出ていた方に、必死で声をかけました。事情を話すと、その方は快く来てくれて、さらに息子さんまで呼んできてくれたんです。
そして男性2人がかりで、私のバイクを起こしてくれました。
本当に、本当にありがたかった。
撃沈
助けてもらったものの、バイクの状態は散々でした。
- エンジンがかからない
- ウィンカーは外れている
- シフトレバーは曲がっている
しかたなく出勤前の旦那に電話して、迎えに来てもらいました。
車に乗り込むと上着についたガソリンの匂いが充満して、何だかもう情けない気持ちでいっぱいでした。
その日の夜、さらなる試練
ここで終わらないのが、この日の恐ろしいところです。
バイク屋さんが、その日のうちに修理してくれたのです。ありがたい。ありがたいのですが——引き取りに行けるのは、旦那の仕事が終わってからまた送ってもらわないといけません。
つまり、夜。
転んだその日の夜に、いきなり暗い夜道を運転して帰るという、まさかの展開になりました。
昼間の道でさえガチガチだった私が、夜道です。
出せるスピードは、50キロが精一杯。
後ろから旦那が車でついてきてくれたので、なんとか帰ることができました。

帰りついて旦那に聞きました。
「私の走り危なっかしかった??」
「うーん、遅かったね(笑)」
「だよねー。でも後ろなんて見る余裕もなかったもん。」
あの日、私の後ろを走ってくださった皆さま。本当に、すみませんでした。
それでも、また乗った
転んで、バイクを壊して、人に助けられて、夜道で泣きそうになって。
普通なら「もうやめよう」と思ってもおかしくない一日でした。
でも不思議なことに、そうはならなかったんです。
次は、あの日起こせなかった悔しさから、YouTubeでバイクの起こし方を勉強しまくった話です。
【あとで知ったこと】転倒でガソリンが漏れたのは「キャブ車」だから
あの日、なぜあんなにガソリンが漏れたのか。あとから知りました。
私のバイクがキャブ車だったからだそうです。キャブレターという部品の中にガソリンが溜まっていて、車体が倒れるとそこからあふれてきてしまうのだとか。
最近主流のインジェクション(FI)車は仕組みが違うので、倒れてもガソリンは漏れにくいのだそうです。
エンジンがかからなかったのも、同じ理由だった
あの日、バイクを起こしてもらってもエンジンがかかりませんでした。これも同じ現象が原因だったようです。
漏れたガソリンがエンジンの中に流れ込んで濃くなりすぎてしまう。この状態を「かぶる」と言うのだそうです。点火プラグがガソリンで濡れてしまい、火花が飛ばなくなって、エンジンがかからなくなる——という仕組み。
調べてみると、対処法もありました。
- しばらく放置する(エンジンの中のガソリンが少しずつ蒸発して、かかるようになる)
- 点火プラグを外して、乾いた布で拭いてから戻す
- アクセルを全開にした状態でエンジンをかけてみる(余分なガソリンが外に出る)
もしあの日これを知っていたら、少しは違ったのかな…と思います。同じように転んでエンジンがかからなくて焦っている方がいたら、まずはあわてず、少し時間を置いてみるのがいいのかもしれません。
(※インジェクション車の場合は、転倒を検知して電気が止まる仕組みがあるそうで、原因も対処法も違うようです)
バイクにそんな違いがあることすら、私は知りませんでした。中古で買うときは、こういうところも見ておくといいのかもしれません。
